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 今回は前回のコラム 「ソ連の初代ジェット戦闘機採用争い」 からの続きの話です。
 1947年にソ連初の主力ジェット戦闘機としてMiG-9が採用決定され量産化に移りましたが、英米をはじめとする西側列強と険悪になって来ている現状ではまだまだジェット戦闘機の能力的に物足りなさを感じていました。そして敗戦国のドイツが研究していた「後退翼」の技術を分捕ってその効果が明らかになると、MiG-9の実線配備と平行して次の世代のジェット戦闘機開発を求めます。
 後退翼の効果とは、音速の壁を越える際に発生する衝撃波についてその発生速度を遅らせる空気の流れを得られる事や、高速時において補助翼の逆効き(エルロンリバーサル)を緩和させるなどの操縦性の改善効果もあり、音速突破を目指していた当時の戦闘機にとっては画期的な技術でありました。しかもWWⅡ敗戦前のドイツでは、その後退翼の上面の適度な位置に境界層フェンスを備え付けると、低速度時での失速特性を押さえる効果も研究されていたからすごいです。
 そんなこんなで、ソ連の後退翼ジェット戦闘機の採用争いが始まりました。
 まずはヤコブレフ設計局がff33f7b7.jpegYak-17という戦闘機を採用争いに参加させてきましたが、前コラムで登場したYak-15を元に、前輪式に変更してついでに尾翼を若干拡大させ、外部燃料タンクを搭載可能にした等の改良機で、未だ直線翼のままでした。最高速度も748km/hしか出せずに真っ先にボツ。しかし後退翼機の開発が失敗した際のバックアップ機として約480機が生産されて、ソ連国内だけで無くポーランドやチェコスロヴァキアにも輸出されています。
 次に具体化するのは1946年9月にテスト飛行させたラボーチキン設計局のLa-150。La-15.jpgこの試験飛行はドイツ製Jumo-004ジェットエンジンを実験的に搭載した形であったが、亜音速を発揮出来る可能性を持った機体として判断され、後退翼の利点を実証した結果となりました。La-150はその後も続けられたテスト飛行で数箇所の改修を終え、La-15(NATOコードネーム:ファンテイル)と改名します。そして正式な搭載エンジンが決定される段階で、ラボーチキン設計局はMiG-15で搭載される事が決定しているクリモフVK-1ターボジェットエンジン(推力2,650kg)の搭載を求めましたが許されず、RD-500(推力1,590kg)を選択させられてしまいます。このエンジン選定は多分に政治的理由によるMiG-15援護があったように思われますが、クリモフVK-1エンジンの元となったロールスロイス・ニーン2というジェットエンジンをイギリスから入手して国産化に尽力したのはミヤコン・グレビッチ設計局であったので致しかたない点もありました。非力なエンジンしか搭載を許されなかったLa-15はやはり充分な性能を発揮出来るはずもなく、主力戦闘機の座は当然のごとくMiG-15に奪われましたが、迎撃戦闘機として約100機が生産されています。また、このLa-15がラボーチキン設計局として結局は最後の機体設計となり閉局してしまう事になりました。
 そんな中、満を持して具体化してきたのが前述のとおりミヤコン・グレビッチ設計局MiG-15.jpgのMiG-15(NATOコードネーム:ファゴット)です。 ソ連当局の期待を受け、クリモフVK-1ターボジェットエンジン(推力2,650kg)を搭載して量産化されたその性能は、最大速度1,067Km/h、実用上昇限度15,500mを発揮。飛行テスト当初こそ、高高度飛行や高速飛行中に突然スピンに陥るという重大な欠陥があったものの速度計と連動したエアブレーキを追加装備する事によって改善させて、15,000機以上が生産される傑作機となりました。
 このMiG-15はソ連の介入によって共産化した東ヨーロッパ諸国や中華人民共和国にも輸出され、1950年6月から始まった朝鮮戦争では、アメリカ軍を初めとする国連軍の直線翼戦闘機(F-80C/Dシューティングスターやグロスター・ミーティアF8)では全く歯が立たず、高高度で爆撃編隊を組むB-29もバッタバッタと落とされてします。 アメリカ空軍が急遽、最新鋭の後退翼戦闘機:F-86Aセイバーを投入し制空権争いが互角となり、F-86E型やF型が登場したのと同時にレーダー機器の充実と性能向上によってやっと国連軍が制空権を確保出来た状況でありました。
 MiG-15は朝鮮戦争後も東側諸国で愛用され、戦闘機タイプを初めとする単座型は1980年代、練習機タイプの複座型に至っては20世紀末頃まで使用され続けた息の長い軍用機となりました。
 
 

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