当たり前の話ですがどんな名機であっても年月を経て最終的にはスクラップとなります。運が良ければ博物館で丁重に保管されたりしますが、戦闘で破損せず無傷であっても躯体の耐用年数がありますし、優秀な後継機種が出来て交代なんて事になります。で、今回のテーマはスクラップの話ではありません。スクラップするまでも損耗していないが、本来の任務機としては第一線から引退させないといけない場合の話です。WWⅡ当時の軍用機は進化が早かった期間ですから、メイン任務から外れた機種なのに沢山作りすぎて結構余っちゃったていうケース。また、実戦配備当初に駄作だった事が発覚して既に作ってしまったとか、設計段階で早々に量産発注して完成したら駄作機だったとかってのもあります(特にイギリス機がこのパターン多い)。
ではWWⅡ主要参戦国は、そういう軍用機をどうしていたかっていうと、
① 「同盟国に買って貰う」が一番ベストです。「世界の兵器工場」を自負していた米国なんて、イギリスを初めとする英連邦諸国やソ連、南アメリカ諸国などにうまく余剰機種を販売して儲けたりしています。ソ連へ販売したP-39エアラコブラや、フィンランドへのB-239(F2Fバッファローの輸出型)なんて、なまじっかそっちの国で大活躍とかしちゃって感謝された成功例もあります。
② 「後方支援的な輸送機や哨戒機に改造して使う」。中大型爆撃機なんかは輸送機に改造出来易いです。
③ 「練習機に格下げする」。戦闘機の引退後はこのケースが多かったですが、操縦性の素直な機体が望まれます。大中型機であっても無線練習や銃座射撃訓練に使用する機上練習機に転向させるってのもこのケースでしょう。
④ 「連絡機・気象観測機に使う」。複座以上の機種で後続距離が比較的長いのであれば転向出来ます。離着陸が短距離で済む機種なら打ってつけです。
②のケースが各国で行なわれたのは容易に想像が付きます、③のケースは結構機種が限定されますし、練習機として専門に開発された機体も存在するのであまり数が要るものではありませんが、フィンランドやルーマニアなど空軍力が未成熟な国ではこのケースが多いものでした。④のケースもそんなに数が要るもんじゃありません。
そして今回の本題、⑤ 「標的曳航機に改造して使い切る」。⑥ 「その他の特殊な用途に使う」。のケースについては色々と具体例をあげてニンマリしましょう。
まずは、先に⑥ 「その他の特殊な用途に使う」 の具体例を挙げていきます。以前のコラムでも書きましたが、ドイツの双発爆撃機トリオの余剰機体は、ミステル飛行爆弾の母機に使われたりしています。またHe111なんて2機をくっ付けてHe111Zという巨大グライダーを曳航する機体に改造されてもいます。日本では悲しいかな終戦末期に余っていた二線級機体は武装等重いものを降ろして片道燃料だけ積んだ特攻仕様なんかに改造しちゃっています。この時に搭載する爆弾なんてワイヤーでぐるぐる巻きに胴体腹部に巻きつけただけのケースもありました。一式陸上攻撃機はロケット機桜花を腹部にくっ付けて戦闘地域まで曳航しています。
イタリアは連合軍に降伏した時点で上層部から何の指示も受けられずに連合軍やドイツ軍に接収された余剰機体がたくさんありました。SM.85は地中海気候にも関わらず余剰機体を露天放置していたら風化しちゃいました。英海軍の艦上戦闘機ブラックバーン・ロックは単発機でありながら後方動力銃座を搭載したが為に重くて艦上戦闘機としてすぐに引退させられた機種ですが、陸上基地に放置して二次利用先を相談しているうちに、その基地が空襲を受けて露天係止していたブラックバーン・ロックが離陸せずに動力銃座を使って実際に何機かのドイツ機を撃墜したって話もあります。また、フェアリー・ヘンドンという機体は15機を完成させたのだが飛行そのものが危なっかしくて、無線訓練や作業用訓練として「飛行させてはいけない練習機」に任命されたりしています。
⑤ 「標的曳航機として改造して使い切る」 も各国で行なわれましたが普通はそんなに数が必要なものではありません。だがしかし大変、イギリスはこの標的曳航機に格下げされた機種(標的曳航機としてしか使い道が無かった機種)が多いのってなんの。当時イギリスは英連邦宗主国であるのに、余剰機種を半分無理やりに売りつけられる国があったはずなのに断固拒否されたのでしょうか? やたら標的曳航機になった機種が多い。実際にある程度の数が標的曳航機になった機種は、ウエストランド・ライサンダー、ブラックバーン・ボウタ、ブラックバーン・スキュア、ボールトン・ポール・デファイアント、フェアリー・バトル、ホーカー・ヘンリーです。デファイアントに至っては200機を越える機数が標的曳航機になっています。しかもそれでも足らなかったのか、イギリスはなんと同時期にアームストロング・ホイットワース・アルベマールや、マイルズ・マーチネットという標的曳航専用機まで量産しっちゃっている(2機種だけでも約2,300機)から不思議です。標的曳航機だけでパレードが出来そうです。
ちなみに現在では、標的を曳航しなくても標的自体で飛行できる無人の無線標的が使われてます。腕の良かった標的曳航機パイロットは無線標的機操作員の教官にでもなっているのでしょうか?
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