今回はWWⅡ当時における日本帝国海軍以外での水上戦闘機の話題です。
まずは、アメリカ海軍のF4Fワイルドキャットの水上戦闘機化です。日本軍の二式水上戦闘機が島嶼争いで有用だと感じたアメリカ海軍は、1942年に当時の主力艦上戦闘機であったF3Fワイルドキャットの水上機改造を計画します。1943年2月に完成した試作機はエド社にて改造されたもので、非公式社内呼称はF-4F-3Sワイルドキャットフィッシュ。双フロート式が採用されておりそのフロートの後方には補助舵が装備されていて、水平尾翼にも縦型の補助尾翼が装備されてました。胴体最後方の下部にも尾翼フィンが追加されており、飛行時の方向安定性確保に苦労した事が表れています。もちろん飛行性能はオリジナルのF4Fワイルドキャットと比べるまでもありませんでした。1943年の後半ともなると、太平洋戦線はアメリカ軍の絶対的優位な状況になっており、また必要であればすぐに現地飛行場を確保出来る工業力を保有しているし、小型護衛空母なら毎月どんどん就役してくる状況となった為、わざわざ性能の劣った水上戦闘機を使用せずとも良いと結論されて、F-4F-3Sは2機の試作のみで量産されませんでした。
そしてイギリスでは名機スピットファイアを用いて水上戦闘機開発を少なくとも3度試みています。
ドイツ軍がフランス侵攻とともに、デンマーク・ノルウェー侵攻を始めた頃、ノルウェーのフィヨルド内で使用するのを主目的とした水上機戦闘機の必要性が出てきました。イギリス航空省は安易に飛行場を建設出来ないノルウェー沿岸で水上戦闘機を使おうとしたのです。
で水上機化のベースは、新型機なのに性能悪く余剰していたブラックバーン・ロックにフロートをくっ付けてノルウェーへ送ろうと思いついたのですが、冷静に考えると 「駄作機にフロートつけても駄作度が増すだけで戦力になるはずが無い」 と気付いたようで、当時の超最新鋭スピットファイアーMkⅢをベースに用いる計画に変更。その開発計画を実行するにあたり、既に量産ベースに乗っていたスピットファイアMkⅠで実験する事になりした。
こうして最初に具体化されたタイプ342と呼ばれるスピットファイアMkⅠの水上機型が実験機として1機完成し1940年に飛行テストを受けましたが、もたもた実験しているうちに、ノルウェーはドイツ軍に占領化されてしまい、イギリス本国自体がやばくなって来たので 「もう水上戦闘機なんて要らない」 って事になって、スピットファイアーMkⅢの水上機型(タイプ344)は完成するまでも無く開発中止。1機が完成していたタイプ342は通常の陸上型に戻されています。
数年後の1942年に再びイギリス航空省はスピットファイアの水上機型を求めます。エーゲ海南東方面でのドイツ軍空輸作戦を阻止するために水上機戦闘機が必要となったのです。ベースとなったのはスピットファイアMkⅤでやはり当時の最新鋭バージョンを選択しました。今回も双フロート式でしたががっしりとした大きな一枚板で双フロートを連結させ、垂直尾翼を拡大、さらに胴体最後部下面にフィンを追加装備した形で4翔プロペラと熱帯用キャブレターインテイクも採用されました。この機種はタイプ355と呼ばれ1943年にようやく3機が揃いましたが、その頃のエーゲ海南東方面の制空権は完全にドイツ軍のものとなっており、活躍の場を失ったタイプ355はエジプトのグレートビター湖で訓練飛行しただけで実線に出ることなく生涯を終えています。
懲りないイギリス航空省は、1944年にまたスピットファイアの水上戦闘機化を計画します。ヨーロッパ戦線の反撃目星が付きそうなので、ぼちぼち東南アジアに航空隊を送り込んで本格的に対日戦しようかと考えたのがその原因です。今回もバリバリの最新鋭であるスピットファイアMkⅨをベースに双フロート式の同じような尾翼改造した実験機を製造しまずまずのテスト飛行結果を得てタイプ385と呼ばれました。でもテスト飛行だけでその開発はそのまま放置になってます。結果的にイギリスの戦闘機開発は、スピットファイアのグリフォンエンジン化、シーファイアの運用性向上、テンペストの開発に力を注いでますから、水上機戦闘機開発の放置は正解でした。
あちゃ~、ワイルドキャットとスピットファイアの水上戦闘機化だけでこんなに文章が長くなってしまった。次回コラムは、その他の水上戦闘機種って事で続きを書くとします。
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